最近ではテニスコーチになるための学校があって、テニスコーチというものを体系的に学ぶ機会が増えていますが、
一昔前は(少なくとも10年前は)バイト募集のチラシを見て、直接テニススクールに飛び込み、現場に入り、先輩のレッスンを見て真似して、そこから自分なりに工夫してコーチ力を向上させるのが普通でした。
今でもそんな現場たたき上げのコーチは多いと思います。
私がそうです。
そんな現場中心にやってきた私が後悔しているのが、ちゃんとした理論を学んでこなかったこと!
※単に私が学校の存在を知らなかっただけです。。。
全て現場でやってみて検証して、ああでもないこうでもないと、自分流にやっていたんですねえ。
確かに現場でしか学べないことも沢山あり、貴重な経験をしてきましたが、指導理論においてはかなり遠回りしてましたね。
テニスコーチにも基本となる指導理論がありますので、現場主義の方が私みたいに遠回りしなくていいように、記事にしておきたいと思います。
ゲーム・ベースドオン・アプローチ(Game Based On Approach)
現代のテニスの指導現場において主流となる理論で、調べればたくさん出てきますし、説明のされ方も様々あると思いますが、
練習のための練習ではなく、ゲームのための練習をしましょう。
というのが私の解釈です。
そもそもテニスの練習は何のために行うの? → ゲームで使えるようにするため
ですよね。
テニスというゲームを楽しむためには何を練習すれば良いか。
いかにして練習すればゲームで勝てるようになるか。
初心者であっても上級者であっても、テニスはゲームを楽しんでなんぼ!
練習のための練習をしていてもつまらないですし、テニスは打ち方の美しさを競う競技ではありませんからね!
Game Based On Approachを現場に落とし込む
ゲームベースドオンアプローチの考え方は、既に試合を楽しめるレベルのプレイヤーだけが対象ではありません。
テニスを始めて間もない初心者にも提供されるべきなのです。
ただ初心者に対していきなり、試合をしましょう!と言っても成立しませんから、そこはやはり順序立てが必要でして、この事柄をこの順番に習得していけばテニスというゲームを楽しめるようになるよ、という道しるべに沿って学んでいくことが必要です。
そして指導者は、その習得すべき技能、順番をしっかり把握しておく必要があります。
習得すべき技能①:対人スポーツへの理解
テニスは相手がいないと成立しない対人スポーツであり、戦う相手は生身の人間です。
なので初心者のうちから相手との関わり方を学ぶ必要があります。
これはコートに立たずとも、遊びの中で培うことができます。
例えば「手押し相撲」は、相手が攻めてくるのか、こちらが攻めるのを待っているのかという駆け引きを学ぶことができます。
習得すべき技能②:Practice Like a Match(プラクティスライクアマッチ)
やはり一般のスクールではまだまだ「型・打法」をベースにしたレッスンが多く行われている印象があります。
型が全く必要ないわけではありませんが、型の練習だけでしててもゲームには勝てません。
そこで登場するのが「Practice Like a Match」=「いかにゲームに近い練習をするか」です。
テニスというゲームで大事なことは
まずは、いかに1球でも多く相手コートに返すか =ラリー
次に、相手を動かすこと。オープンコートに打つこと =コントロール
そして、いかにオープンコートを作るか =工夫
これができるように練習を組み立てる必要があります。
習得すべき技能③:場面状況の中でのスキル(戦術)
いよいよ実戦的になってきます。
場面状況のスキルというのはいわゆる「選択する力」です。
ラリー中においては一つの判断の誤りが失点につながります。
ラリーでの場面ごとに適切な判断・選択をする力を習得する必要があります。
例えば「ポジションの理解」だったり「攻守の選択」だったりします。
この状況ではどこに立てば合理的か、今は攻めるときか守るときか、その都度、刹那の時間で選択しなければなりません。
習得すべき技能④:戦略・作戦を立てるスキル
「戦術」と「戦略」の違いですが、戦術は1つのポイントを取るためのスキル。
これに対し戦略は、1つの試合に勝つためのスキル。
戦術は短期的な考え方で、戦略は長期的な考え方となります。
例えばテストで良い点を取りたいというときは、試験日を把握して、この日までにこれができていなければいけないな。
というゴールからの逆算をすると思います。これが戦略です。
テニスにおいても同じで、例えば相手がビッグサーバーであれば、
自分のサーブは絶対キープする。
そして相手サーブは2~3ゲーム分落としていいから攻略法を見つける。
最終的に6-4で勝てれば良い。
とか考えますよね。
そういった長期的な視点のことをいいます。
フォームは想いで作られる
サッカーボールが目の前にあって、3m先の相手から、そのボールこっちに蹴ってくれない?
と言われたとして。
どうやって蹴りますか?
・・・え、どうって、考えたことないし普通に蹴るだけでしょ?
と思いますよね?
それがテニスのフォームでも同じなんです。
いちいち考えたりしない。あそこに打ちたいから打つ。
それがどんなに個性豊かなフォームでも、自分の思ったところに打てるのなら文句のつけようはありません。
※ケガの恐れがあるならば矯正は必要ですが。
型や打ち方ばかりに気を取られて判断が遅れては勝てる試合も勝てなくなります。
習得すべき技能②のPractice Like a Matchでも出てきましたが、まず習得すべきは「ラリーする力」、次に「コントロール」、そして「工夫する力」。
これらを習得する過程で必要な技術が出てきたらその部分を練習すれば良くて、最初から技術の方に目が行ってしまうと、テニスの楽しさを伝えるのに遠回りとなる。
そのことを我々コーチは知っておく必要があるでしょう。
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